ケーブダイバー憧れの聖地と言えば、メキシコ!セノーテ!!(セノーテとは中米ユカタン半島に見られる、石灰岩地帯にできた陥没穴に地下水が溜まった天然の泉のこと。)
そのメキシコで、昨年いくつかのセノーテのマップに恐らく初めて日本人の名前が載りました。
その日本人とは、TDIインストラクターであり、精力的にセノーテを探検するダイバーでもあり、またテクニカルダイバーなら誰でも知っていると言っても過言ではない、三保仁先生です!
三保先生は、医学生時代にダイビングに出会い、その後横浜で三保耳鼻咽喉科クリニックを開業。ケーブ探求のために現在は医師は引退し、メキシコに移住されています。
今回はマップにお名前が載ったことも含め、ケーブダイビングの魅力からご自身のことまで様々な質問にお答えいただきました。記事中のマップと写真も三保先生からのご提供です。質問は、SDI TDI ERDI PFI JAPAN代表の加藤大典、そしてわたし青木優子の2人でまとめました。
前編・後編の2回に分けてお届けします!
●マップにお名前が載ったのは、日本人初だと思います。また何枚ものマップに有名な探検家たちと一緒に掲載されるということは日本人として誇りに感じます。マップに掲載されてどんなお気持ちですか?
自分がケーブダイビングを始めた頃に、すでにユカタン半島の100以上のセノーテを開拓していた前人達がいます。近所でも、古い物だと1889年のラインなどもあります。ジム・フィリップスは数年前に病死するまで、最も古いケーブダイバーの一人でした。そして、もう30年ぐらいこちらに住んでいる有名なロビー・シュミッターなど、その他にもこちらで潜るケーブダイバーがほとんど全員が知っている人達が、開拓者としてケーブマップに名前が載っていました。
ですが、その人達に肩を並べて私の名前がマップに載ることには、驚きと共にものすごく嬉しく思いました。でも私の仕事は前人達の仕事に追加した程度のことです。バージンケーブを見つけて、ほとんど私一人でラインを引ける事を夢を見ているのです。
● かなり初期のころにテクニカルダイビングを始めていらっしゃいますが、どのようなきっかけで始められたのですか?
同じ理由でケーブを始めた方が日本人にはそこそこいると聞いていますが、NHKの特番でフロリダのワクラケーブを開拓しているケーブダイビングの番組が放映されました。その頃にはこんな世界があるのか、自分が知っているダイビングとは全く違う世界でのダイビングに興味津々ながら、別世界の内容でした。
そんな矢先に、PADIのテックディープダイバーコースがリリースされ、グアムのコースディレクターの元で初めてダブルタンクを習いました。ビキニ環礁を潜ってみたかったのです。ここで初めてテックの世界に入ったわけです。ビキニでダイビング後にフロリダでケーブを習う話しが舞い込んできて、ケーブダイバーになったのです。まさか、NHKで見たワクラにまで自分が潜る事になるとは、当時思ってもみなかったです。
●セノーテには、週に何日くらい潜っているのですか?
天気、体調、気分によります。週に1〜5日ぐらい、平均して週に2〜3回ぐらいは潜っています。人と約束をしていないときには、朝起きて雨が振っているとすぐ辞めちゃうんです。
●人と約束をしていない時には、と先程お答えの中にありましたように、セノーテの探検はソロが多いと思いますが、セノーテにおいて、ソロダイビングとチームダイビングでは、それぞれどんなことに注意していますか?
人と潜るときには、自分よりも経験値が低い人と潜る事がほとんどなので、それなりに注意を払って皆の行動を見ています。そして、安全確保と迷惑がかからないようにするために、基本通りの手順をきちんと守りながら、行動や目的が分かりやすくなるように潜る事にしています。お金のやり取りが発生しないガイドダイビングでも、全員を把握してかなり気を遣って潜っていますね。他の人の安全や命を、私も管理している気持ちです。
その辺り、ソロダイビングはお気楽です。気分や天気でダイビング計画を変えられるし、計画よりもずっと手前で写真撮影に燃え始めてそこだけでダイビングを終わらせたりなど、水中での行動も計画変更は自由自在ですから。しかし、ソロダイブは私を見ている人がいないわけで、そんなにきちんとした手順で厳密にやらなくてもいいやという甘えの罠が、かつては何度かトラブルを起こしたこともあります。ですので、基本的な手順を省略することなく、ソロダイブの時には特に厳密に守るように意識しています。夜中の誰もいない歩行者信号で、ちゃんと信号を守るのと同じですね。
●何度かトラブルを起こした事もあるとのことですが、探険中、最も怖かったことは何ですか?
2つあります。1つは、初めてのジャングル内のセノーテでダイビングをしたときに、エキジット後に車がどこにあるのか分からず、ジャングル内を2時間以上さまよったことです。GPSの装備などを怠ると、エキジット後に車まで戻れなくなって日没が迫り、冷や汗をかいたことがありました。この時には何とか車を見つけられましたが、一晩蚊が多いジャングルに野宿する根性はないですから。
2つめは水中ですが、うっかりとして基本的な手順を守らずにケーブ内で方向感覚が分からなくなって一瞬ながらケーブで迷ったとき、それから初めて狭い所でスタックして視界ゼロになったときにドキドキしたことです。バックマウントだったのに、サイドマウントしか通れない穴を通過しようとしてしまったのです。水中のトラブルは、パニクったらケーブでは助かりませんから、自分の気持ちを根性でコントロールできる事が大切です。でも、それ以前にケーブダイビングで決められた共通ルールを守っていれば、その様なことにはならないわけですから、人が見ていないならなおのこと「基本を守って潜る」ことで、ケーブの事故は基本を守ればほとんどなくなるといわれていますし、海のダイビングと比べたら遙かに低い事故率です。ケーブもリブリーザーも理論的にはほとんど完全に安全と言えますが、扱うのが人間なので、ヒューマンエラーで事故が起きるのです。
●では三保先生が思うケーブの魅力とは何ですか?
きれいなものや珍しい光景ももちろん魅力ですが、経験が増えるとこのあたりに昔は出口があったに違いないとか、この方向に風が吹いていたんだなとか、そのケーブの成り立ちとか歴史が想像が出来るようになります。それをユカタン半島全体を考えながら潜っていると、単に「わあ、キレイ」だけではなくてそういう所まで考えるようになります。美味しい物を食べて「わあ、おいしい」だけじゃなくて、素材や調味料、調理方法を考えるようになるのと同じですね。その他にも、ジャングルで出会うタランチュラやサソリ、ヘビなども、生き物好きですから楽しいです。
後編では、三保先生ご自身のことやこれからの夢について更に教えていただきます。
お楽しみに!
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